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[男子と腐男子が入れ替わっちゃいました☆ 黒木とアキラ]
*黒木とアキラ



おはようございます
山口アキラです

俺は誰に話し掛けてるんでしょう

いや、今ちょっと頭が混乱してるんで色々勘弁してください

そう
俺は山口アキラ
アキラなんだよ

「………」

だから今この見慣れない部屋の中で鏡に映った男の顔を見て、あまりの驚きに異世界に意識が飛んでってしまったんだ

「……………」

なんだ
なんなんだこれは

見れば見るほど美しく…いや、男らしく整った顔
まさに俺が憧れ夢にまで見たイケメンというもの

それが鏡に映ってる

しかもそれが普通のイケメンならまだしも
俺は明らかにその顔に見覚えがあった

「………」

この切れ長の黒い瞳に漆黒で艶のある髪
薄い唇に前髪を掻きあげれば見えた綺麗な額

間違いない

……この人は

『……黒木さんじゃねぇかぁぁぁああ!!!』


とりあえず制服用と思われる黒いカッターシャツに黒いズボンを履いてから、鞄を抱えて外に出た

「…か、鍵っ…!」

あたふたとこの方の自宅の鍵を見つけ出して扉を締めてから学校に向かう

「おはようございます黒木さん!」

道を早歩きで歩く中、至るところから不良に挨拶されてビビりまくる俺

「…………」

取り敢えず無視しよう無視
きっと言葉を返してもろくな事にならないんだ

そのまま挨拶の嵐を無言で突っ切れば

「……おい、見たかよ」
「…ああ」

なにやら不良様方の間で始まったヒソヒソ話

なんだ無視は流石に不味かったか?
俺のせいで黒木さんが悪口言われるのか…!?

それはまずいと冷や汗が流れた瞬間

「マジ格好ぇーよ黒木さんっ!」
「無言で通り抜けるあの背中…たまんねぇー!」
「あんな男になりてぇなぁ…!」
「憧れるぜ、ホント」

なんと悪口どころか、大絶賛じゃないか

「………ふっ」

顔がかっこよくて喧嘩が強いだけで、人生こんなにも変わるのか
なんだか哀れだ
そして悲しい…

そんな気持ちでいつの間にかトボトボと学校へ来ていて

「…おはよう」

自然な流れで自分の教室を開けていた

「…………」

すると教室の空気が凍り付いたのを肌で感じて顔をあげた

……ん?
なんだ何故皆俺から顔を逸らすんだ

その時改めて、俺は自分自身の状態を思い出した

「……間違エマシタ」

顔面蒼白の上に片言でそう告げながら扉を締めて
急いで三年校舎へ向かう

そうだそうだった
俺は外見黒木さんだったんだ…!
なんだどうしてこんな事に…!

イケメン面もここまでくると逆に落ち着かねぇよ!

俺っ、俺はどこなんだ!!

微かな希望を抱いて勢い良く黒木さんの教室の扉を開けば

「「おはようございます!」」
「ぬぉあっ…!?」

盛大に響いた野太い声に思わず身体が跳ね上がった

そんな俺の反応に一瞬教室は静まり返ったが
窓際の机の所に座る、平凡極まりない後ろ姿を見た途端

「………っ!」

俺は直ぐ様その背中に近付いて肩を鷲掴んだ


するとゆっくり振り返ったのは、平凡極まりない俺の顔

の、筈なのに

「…………」

なんだ
このニヤリ顔は

唖然としている黒木さんな俺に、俺の顔した誰かが耳元まで口を持ってきて囁きかけてきた

「…アキラ、俺だ…黒木だ」
「!!?」
「落ち着け、俺の顔でやたらと表情を変えるな…それは今後に関わる」

なっなっなんだ?!
いや、うっすら分かってはいたが何故こんな事にぃい!?

ていうか俺な黒木さん、普段のビビり癖が無くなって…妙に落ち着いてて俺じゃ無ぇえ!

あれか、人間やはり内面なのか!

ぐるぐると視界が回って
自然といつも黒木さんの座っている座席に崩れるように着席する

「はい、おはようございます」

その瞬間教室の扉が開いて担任らしき先生が現れた

点呼を取っていく声を虚ろな表情で聞きながら

「黒木」
「………」
「……黒木?」
「……あ…ハイ…」

黒木と二回呼ばれた時にようやく気付いて返事をしながらも

嗚呼
一体どうすりゃあこの状態から抜け出して、元に戻れるんだ…

そんな事だけをつらつらと考えていた

「…き…聞いたか…」
「……ああ…」
「黒さんが…ハイだってよ…」
「…何だ、今日はまた一段と礼儀正しい…」
「…そんな姿も…渋いぜ」
「…そ、そうだな…」

もうホント

「……はあぁ…」

なんて一日だ


そして一限目の数学の時間

さっぱり着いていけない三年生の授業に、黒木さんの顔で半分放心していれば

「…はあ、アキラ…」

すぐ隣に座る
呆れたような俺の顔した黒木さんに小さく叱られた

「その間抜け面は止せ…お前の顔なら可愛くて良いが、俺にはキツい」
「すっ、すいません…」

可愛いとか訳のわからん単語が聞こえた気がしたが
まあ取り敢えずはこの顔は止めろと言われてるらしい

囁くように謝ってから、シャキッと姿勢を正して黒板を見つめた

「…それで良い」

なんか、変な感覚だなぁ…
俺の顔した誰かに誉められるのって…

そんなこんなで、授業の前半は何時もと変わらない時間が流れていった


そんな中、事件が起きたのは授業の後半

何気無く隣の俺…いや、黒木さんを見てみれば

「……?」

なにやら一つのものを真剣に見詰めていた

一体何をそんなまじまじと見ているのかと、視線の先を追ってみれば

「……?!」

なんとその先には鷲沢さん

なっ、ななな何してんだ俺ぇぇえ!!

ガンなんか飛ばすな!
馬鹿!
殺されちまう!

ホントなんか止めて下さい黒木さん俺の身体だからってそんな危険な事しないで下さい

ずっと窓の外を見ていた鷲沢さんが、俺…いや、黒木さんの視線に気付いたのか

ゆっくりと首だけ後ろに向けてきた

「……!!?」

黒木さんの顔で青ざめる俺

未だに鷲沢さんを見詰める俺の顔した黒木さん

そしてあろうことか視線が絡んで数秒後

「……んだよ…」

根負けしたのか、鷲沢さんが先に俺の顔から視線を逸らした

「……はあぁぁ…」

その事に安堵のため息をついた俺
良かった良かった
危うくリンチだったよ全く
人の身体で何してくれてんだこの人

そんな視線を隣に向けてやれば

「………」

しらっと流された挙げ句、なんと席を立ち上がった俺の身体は

「………あ?」

鷲沢さんの所へ一直線に歩いていった

「……っ、なっ…?!」

狼狽する俺を他所に、初めてまともに俺の顔で口を開いた黒木さん

「あっ、あああのっ…鷲沢…さん…!」

……って馬鹿ぁああ!
俺で俺の物真似するなぁあ!

しかも似てるし!

「…何だ」

アンタも普通に返してんじゃねぇよ!
なに!?
気付かないの?!

今すぐにでも飛び出して、あの俺の暴挙を止めてやりたいのに

黒木さんのオーラが『ここに割り込んだら殺す』と書いてあるせいで動けない

そしてあろうことか次の瞬間

「…お…俺っ…なんか、すいません…っ」
「……!?」

鷲沢さんの首に腕を回して、抱き締めやがった…!

しかも教室で!

そしてその時俺は理解した

「…………!!」

そうだこの人

腐 男 子 だ っ た !

最早顔面蒼白の硬直状態に陥った俺を横目に
何やら鷲沢さんの綺麗な耳元でぼそぼそ話す俺な黒木さん

言葉を聞き終えた鷲沢さんは何故か顔が真っ赤に染まって、可哀想にすらなってくる

なんだあれは怒りすぎて赤いのか、それとも黒木さんが何か如何わしい事でも口走ったのか

どっちにしろ良い方向に進んでいるとは思えない

「…神様…助けてください…」

涙声になった黒木さんのハスキーボイスが
この静かな教室に響いた気がした


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