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[2 〜黒木side〜]
*黒木side



楽しい
なんて楽しいんだ

「……好き…」

鷲沢の耳元でさっきから繰り返すこの言葉に内心ニヤニヤしながら、アキラの身体になれた奇跡を神に感謝した

「……鷲沢さん…ぎゅってして…?」

耳まで赤くなったコイツにもかなりの萌えを感じながら
鷲沢×アキラのフラグを立てまくる

よし、これからアキラは天然無自覚平凡誘い受けにしよう
むしろ俺がそれを遂行してやろうじゃないか

こういう身体の入れ替わり設定は大体一日限定だからな

ふふ
俺だって腐男子としてそこら辺の暗黙の了解設定はきっちりと理解している

ならばこの一日で、色んな所でフラグを立てまくってやろうじゃないか

取り敢えずまずはコイツからだ

「…ねえ…俺、鷲沢さんの髪…ホント好き…」

甘えた声を出しながら
もう何回もスキ発言を連発する

普段のアキラには絶対に無いこの設定に
鷲沢の野郎はただただ全身を赤くしながら唖然としてやがる

「………」

最近気付いたが、コイツはアキラの事となるとツンデレの上に純情な所もかなり入っていないか?

女にはあれだけ軽々しく手を出す癖に、アキラには超が付くほど慎重で奥手だ

……萌えるじゃねぇか

俺の萌えポイントを一々突くお前が悪い
なんて端から見れば滅茶苦茶な言い訳と一緒に、どさくさに紛れながら耳を少し甘噛みしてやる

「………っ!?」

そうすれば微かに跳ねた肩

「…鷲沢…さん…」

そして止めの一撃で最後に耳元で一言

『あいしてる』

真っ赤になりすぎてとうとうノックアウトした鷲沢は
机に物凄い勢いで頭をぶつけて、自ら意識を飛ばしに掛かった

理性を保つためか…
ふ、お前も中々大変な男だな


机に突っ伏したままピクリとも動かなくなった鷲沢にそんな哀れみの視線を向けていれば

「ちょ、ちょっと…!」
「……!」

急に俺の声が聞こえて
首根っこをひっ掴まれながら教室から出ていかされた

そのまま廊下をズルズル引きずられながら薄く思う

ああ
これがアキラと俺の体格差というやつか

そんな事にすらニヤニヤしていれば、廊下の突き当たりで止まった脚

「……はあ…っ」

響いたのは大きなため息

「……黒木さん…」
「何だ」

静かに俺の名前を呼ぶ俺はかなりシュールだ

「…あなた様の妄想に山口アキラを利用するのは止めて下さいお願いしますぅぅう!!」

そして半べそをかきながら廊下で土下座する俺はもっとシュールだ

「……いや、お前もそれは止めろ…鬼畜クールな五代目黒木のイメージが根底から覆される」

眉間を強く押さえながら、とりあえず中身がアキラな俺を立たせて
制服についた埃を払ってやった

「さっ、さっきのわわ鷲沢さんの…もう俺、明日からどんな顔すれば…っ!」
「別に変なことは言って無いが」
「嘘つけぇえ!!」
「なんだ、『好き』と連呼しただけだぞ」
「……そんな事言ったのかぁぁあ!!」

何言ってんだよ馬鹿ぁあ

なんて
大袈裟に膝から崩れ落ちて顔面蒼白になった俺

端から見ればすごい光景だ

「…もう駄目だ…明日は終わりだ…」
「何故だ、鷲沢の奴…あれだけ喜んでいたじゃないか」
「喜んでなんか無いに決まってるじゃないですかぁ…!俺男ですよ!?男に好き好き言われても…気持ち悪っ…」

壁を背もたれに胡座をかきながら、気分が悪そうに口元を押さえた中身がアキラな俺に半分呆れ返る中身が俺なアキラ

いや
もう自分が何を言っているのかわからなくなってきた

とにかく、ここは腐男子として
端から見れば落ち込んでいる俺に黒木×アキラフラグでも立てておくか

「…アキラ」

囁くように小さく名前を呼んでから
座り込んだお前の前にしゃがんで

「……はい」

訝しそうに視線を上げた俺自身の顔をまじまじと見詰める
「…………」
「……?」

なんだ
俺は客観的に見ればこんな顔なのか…
成る程

なんて事をうっすらと思いつつ

「…心配するな、大丈夫だ」
「……一体なんの事について励ましていらっしゃるのかよくわかりませんがありがとうございます…」
「今日は口答えが多いな」
「…なんせ俺の顔ですから…緊張しなくて」

ははっと自虐的に笑ったアキラを、アキラの身体でゆっくりと抱きしめた

「…お前は可愛いよ」
「……それ、黒木さん自身に言ってるんですか…?」
「馬鹿を言え、お前の中身についてだ」

額をくっ付け合って間近で小さく笑えば、向こうも困ったように少し微笑んだ

…俺の微笑みとは、貴重だな

自分自身の顔がアキラによって様々な表情を帯びていくのが嬉しくもあり、時々不安にもなる

なんせ中身がアキラになった途端、あの俺から受けオーラが漂いだしたんだ
……それは流石に不味すぎる

……いやいや、なにはどうあれとにかく今はいい雰囲気だと
一人で満足していれば

「…黒木さんも、可愛いですよ」

あろうことか掠れた低い声と一緒に
ぎゅっと抱きしめ返された

「………!」

…………き…
キターーーー!!
黒木×アキラーー!!

げふげふ失礼
あまりの興奮に人格が…

「……って…ちょっと調子乗りすぎましたね…あはは…」

一人で妙にハイテンションになっていれば、中身がアキラな俺は
はにかむように笑いながら背中に回していた手を緩めた

「………っ」

マズイ…
不覚にも顔が赤らんでしまった
駄目だ、何自分の顔に赤くなっているんだ俺
だが可愛い
可愛いぞアキラ

分かった
要はアキラなら俺は何でも受けに出来るんじゃ無いのか

攻めたい
アキラの身体で俺を攻めたい

いや待て
発言が只の変態になってきた

その上このままではアキラ×黒木になっちまう
それはいいのか
いいや駄目だ

そんな風に悶々と考え込んでいた俺の視界から

「…てめえアキラから離れろぉお!」
「!?」

一瞬にして目の前に居たアキラ…いや外見は俺、が消えた

「…アキラ…っ!」

この真っ白な男によって

「し、白崎…」

ぎゅっと抱き付かれながら、未だに倒れたままピクリとも動か無い俺の身体に視線を向ける

……お前
今自分自身が蹴り飛ばしたのがアキラだぞ…

「…退け」
「……いやだ…」

ぐだぐだと犬と化したワンコ攻め白崎を無理矢理引き離して、心配しながらアキラのもとに足を運ぶ

「…………」

するとその瞬間
無言でむくりと起き上がったアキラはゆらゆらと白崎の方に歩き出して

「…おい、大丈夫か…」

俺の声なんか届きもしていない

……どうしたんだアキラ
流石にいつもはあれだけデレデレしてくる白崎に、いきなり蹴り飛ばされたから怒ってるのか…
はたまた傷付いているのか…

そう思えば迂闊に声をかけて止めるのも戸惑われたせいで、安易に動けない

そんな俺をよそに、外見黒木なアキラが白崎の目の前まで辿り着いて立ち止まった

「…何だ黒木、テメェ喧嘩でも売ってんのか?」

無表情で嫌そうに問う白崎

馬鹿め
お前の愛しのアキラに向かって何て事を

「…………」

しかしまた無言のアキラというのも怖いモンだ
一体何を考えているのか分からない

それも俺の姿だから余計に

そんな気まずい光景を只見ていれば
まず沈黙を打ち破ったのは

「……白崎」

俺、もとい中身はアキラの声

「何だ」

そして気だるそうに聞き返した白い男は次の瞬間

「………!」

パァンという派手な音と一緒に、足元をよろけさせた

「……っ!」

どうやら頬を平手打ちされたらしい

唖然とする俺と白崎

そしてアキラはというと

「…見た目だけかよ」
「……?」
「……結局お前が俺を判断してたのは、見た目だけなのかよ」

そう呟いてから悲しげに顔を伏せた

いや
いやいやいや
ちょっと待て

なんだこのシリアスな雰囲気は

「…黒…木?」
「……お前はそんな奴じゃ無いと思ってた…」

ちょ、ちょっと本当に待て
何故俺の声は涙ぐんでいる

「……っ…」
「とんだ勘違いだったみたいだ…」

まさかアキラは、俺の顔で泣いて…


ああ頭が混乱してきた落ち着け
落ち着け俺

今、どっからどう見たって変なフラグが立ってる

白崎×黒木だとふざけるな
そんな事あってたまるか

しかも俺が受けだと?

無い

死んだって有り得ない

堂々と二人の間に割って入った俺は、白崎と外見が俺のアキラを引き離してから

「………」

ぎゅっと強く本来は俺の身体である体格の良い男を抱きしめた

「なっなななに…っ!?」

オロオロとするアキラに先程以上に唖然とする白崎

そんな中、脅しにも似た声で小さく囁いた

「…俺の外見で、これ以上イメージを崩壊させるな」
「……っ」

有無を言わせない言い方が効いたのか、息を飲んだアキラに教室に戻れと命令してから

固い動きで去っていった背中を見送って

「………」

後ろで未だに突っ立つ白崎を振り返った


もう何がどうなっているのか理解出来ないのか、神妙な面持ちで佇む白崎にゆっくりと近付いて

「………」
「……?!」

とりあえずぎゅっと強く抱き締めた

「…なあ、白崎」

鷲沢の時と同様、耳元で小さく囁けば赤くなる顔

「……アキ…ラ…?」

戸惑ったようなその声にクスクスと笑う

「…俺の事、好き?」

もうどうにでもなれというような気分だった

「……!?」

とにかく俺の身体が大人しく教室に戻ったからには、どこでもかしこでもアキラでフラグ立てとけ
俺得だ

もういい
なんかもうどうでもいい

そもそも俺は誰だった
ああ、黒木か
ははは

もう愉快だ
何がなんだかさっぱり分からん

人格崩壊だ

とにかくアキラ受けが舞い込め!

そんな気持ちで過ごしたぐだぐだな一日

「…今なら襲ってもいいよ、アンタになら…滅茶苦茶にされたい」
「おっ、男の癖になんだテメェ…!」

小悪魔誘い受けが妙に板についた、非常に有意義な身体交換だった

この日だけで、少なくともアキラに惚れた男や女が10人は増えた事を

「へっくしゅん!」
「…?!黒木お前、くしゃみすんのか」
「……え?あ、ああまぁ…俺も一応人間で…だしな」

本人は知る由もなかった























あとがき
いやはや、衝撃的な程ぐだぐだになってしまいました
すみませんごめんなさい!(涙)

しかし書いていて非常に楽しかったです(笑)
黒木さんの人格崩壊はもう残念としか言いようがありませんが…
今回リクエストを頂きました、ヨーコさん
本当にありがとうございました!
そしてぐだぐだになってしまい、すみませんでした…(笑)

以下オマケです




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


幻の貴重映像

「……なぁ、タカト」
「何だ」
「エッチしてくれ」
「ぶは…っ!?ごほっ、げほげほっ…!なっ…!?な、何言ってんだテメェェエ!!」


むせながら超焦るタカト

本編では絶対に有り得ない光景でした。


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