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[2 鷲沢×アキラ]
*2びっくりするな俺だ俺。
鷲沢→アキラ


何故か黒木に被せられた黒く長いウィッグと三高女子の制服セット

「糞野郎失せろ変態が!」
「誰に向かってそんな口を利いている」
「こんな時だけ権力振りかざすんじゃ無ぇ!」

それを思い切り床に叩きつけて怒鳴ってやれば目の前で不敵に笑う男

「…いいのか?」
「はあ!?」
「もしかしたら女装したお前に、アキラが惚れるかもしれ無いぞ」

その言葉に一瞬思考を停止してから

「…は…馬鹿言ってんじゃねぇよ」

呆れた声でそう返して椅子に座る

「アイツが着るならまだしも…何で俺が…」

大体身長が180のこんな厳つい女…居てたまるか

惚れられる以前に引かれちまう

「大丈夫だ、お前は案外綺麗な顔をしているからな」
「ふざけんな」
「化粧をして声さえ出さなければお前だとは気付かない」
「…んな訳無ぇだろ」

あーコイツ最近マジで変だわ
そもそも本当に黒木なのか

黒木の皮を被った他人じゃねぇのか

「まあとにかく着てみろ」
「着ねぇよ」
「無理矢理着せられたいのか」
「アホ言え」
「……仕方ない…この手は使いたくなかったんだが…」

進みも戻りもしないやり取りにため息をついた野郎が、諦めたように
だがどこか楽しそうに長い指先でパチンという軽快な音を鳴らした刹那

「「「鷲沢く〜ん!」」」
「あ゙あっ…!?」

突如教室に現れた俺のセフレがぞろぞろと入ってきて

俺の両脇をがっちりガードした

「…じゃあ頼んだぞ」
「任せといて黒木君っ!」
「アタシ一回この綺麗な顔に化粧してみたいと思ってたのよね〜」
「女装絶対似合うよね」
「似合う似合う!」

もはや反論する気も失せて
情けなく女に引きずって行かれる俺を悠々と見送る黒木

「美人な姿で帰って来いよ」



「……アイツ…殺す…」

口から勝手に出た一言は

「どこで着替える?」
「あ、音楽室開いてない?」
「ホントだ〜!じゃあここでいっかぁ〜!」

掻き消された挙げ句に無視されて
女とは思え無ぇ腕力で音楽室に放り込まれる

「……チッ!」
「じゃあ鷲沢くん、脱がすね」
「寄るな触るな自分でする」

眉間に皺を寄せながら
もう抵抗しても無駄だと思い知った俺は
ため息をつきながらシャツのボタンを外してズボンに手を掛ける

「…やだぁ…毎回思うけど、いい身体よねぇ…」
「しなやかで逞しくて…」
「惚れちゃいそ〜!」

……ったく
何が悲しくてセフレだった女の前で服を脱がせられなくちゃいけねぇんだ

「……とりあえず黙れ」

引っ掴むように白い手からスカートを掴んで強引に履く

「……何で入んだよ」

ぴったりと寸法を測られたように入るそれに顔から血の気が引いていく

「…糞が」

とりあえずそのままブラウスとブレザーもだらしなく着て、ふてくされたように地面に胡座を掻けば怒られた

「ダメよ!スカートからパンツ見えてるじゃない!」
「えーっ、下着トランクスのままなの〜?」
「とにかく正座か乙女座りじゃなきゃ!」
「……ざけんな、犯すぞ…」

そうして身体を散々好きなようにされて三時間

「きゃーっ!」

綺麗に着せられた制服と
真っ黒で長いストレートのウィッグ

「ど、どうしよう…本当に美人…」

暑苦しい黒タイツを履いてミニスカにされた挙げ句に、顔までばっちり何か粉を塗りたくられまくった

「ちょっと厳ついけど…うん、大丈夫いけるわ」
「……黙れ」
「ダメダメダメ!鷲沢くん喋っちゃダメ!」

鏡をチラ見してみれば
情けない格好の自分と目が合って盛大なため息をつく

……全く、アホらしい

今すぐにでも脱ごうとウィッグに伸びた手が

「…これはそこら辺の男なら、確実に惚れちゃうわね」
「………!」

その一言でピタリと止まった

「うん!惚れる惚れる〜!だって綺麗だもん!男なんて全然わかんない!」
「オーラがすでに大女優張りね…」

……そこら辺の男が惚れる?
なら、アイツは?

「…………」

山口は女が好きだ
そして今の俺は気持ち悪いが一応女

会って見るか
…いや、女装してるなんてバレたらそれこそ只の変態だろうが

…だがしかし、万が一気付かれずにアイツが俺に惚れてくれる可能性だって…

そうだ
もしバレたら黒木に無理矢理着せられたと言い逃れをして、いつもみたいに振る舞えばいい

……とりあえず
一回会ってみるか


そう決心して音楽室から俺の制服と一緒に出ていく

「えーっ、どこいくの鷲沢くん!」
「教室に戻る」
「あ、荷物置きに行くの?」
「まあな」

遠ざかる音楽室と女の声

「…あーあ、本当に教室行ったみたい」
「アタシ絶対ここで暴れ回って脱ぐかと思ったわ」
「黒木君の言った通り、素直に女装して戻っちゃった」
「不思議ね、これからどうするのかしら」

そして本人の知らない所で、鷲沢元セフレの下品な親睦会が始まったのである

「テクニックは凄いよね」
「それに言葉攻めも」
「なにより絶倫だし」
「ナニも大きくて立派だったなぁ…もう一回舐めたい!」
「あはははっ!」













たどり着いた教室の扉を勢い良く横に引いて中に入る

「………」

その瞬間ざわついた室内

「な、なんだあの女…」
「……綺麗だ…」
「…やべ…惚れた」
「馬鹿、きっと黒木さんか鷲沢さんの女だぞ」

それを無視して俺の席に脚を組んで座ってから、鞄の中に制服を押し込んだ

「……鷲沢さんの女か…」
「…羨ましい…」

再び机の横に鞄を引っ掛けながら斜め後ろを見れば
ニヤニヤ笑う黒木と視線が絡んで

「良く似合ってるじゃないか」
「…………」
「アレだな、柴崎コムとそっくりなクール系美人だな」

真っ直ぐに切り揃えられた…いわゆるパッツンというウィッグの前髪を邪魔に感じた

「…チッ」

うぜぇ
内心そう呟いてから思い切り睨めば、黒木は更に嫌な笑みを浮かべながら囁くように俺に告げた

「安心しろ、あと数分でアキラがこっちに来る」
「……!」
「精々女であることを楽しめよ」


そして数分後

「や、山口です…っ!もっもももう撮影だけは勘弁して下さいぃい…!」

顔面蒼白になったアイツが、激しく息を切らしながら教室に現れた

「ああ、ちゃんと3分ぴったりだったな…偉いぞアキラ」

また一体どうやって脅したのか…
訝しげに黒木を見てから再び山口に視線をやった

「…はあ…っ」
「とりあえず、俺の横に来い」

ため息をついて項垂れたアイツに堂々とそう言い張る黒い奴

当然逆らえる筈もない山口は、そのままフラフラと黒木の隣にある椅子に腰掛けた

「…ああそうだ、お前に紹介したい人が居る」
「……へ?」

そして突然黒く鋭く、妙に悪どい視線が俺に向けられたかと思えば

「彼女は、転校生の……秀美さんだ」
「……ひでみさん?」
「…な…っ?!」

秀明という名前をもじったような何とも馬鹿にされたような気分になるそれに、つい声を上げようとしたがグッとそれを堪える

「ああ」
「……ひでみ、さん…」

それもこれも、まじまじと俺を観察する山口が悪い

上から下までゆっくり見渡された後
流石にいくら鈍いアイツでも、こんだけ体格が厳つい女は不審に思うか?
なんて内心落ち着かない心境でいれば

「…美人だろう」
「えっ、あ…はい…」

案の定黒木の問い掛けに、いかにも腑に落ちないと言ったニュアンスを含ませて返答した

「…どうした?アキラの好みじゃ無かったか?」

それに目敏く気付いた野郎が囁くように追及して

「えっ…あ…いや、そういう訳じゃ…」

だが次の瞬間アイツが発した台詞は

「…けど、鷲沢さん位格好いい人になると…女装しても違和感無いんだなぁって…」
「「「はあっ!!?」」」

教室に居た野郎共に雄叫びのような驚愕の声を上げさせて

「…お前、よく気付いたな」
「……そっそりゃ…普通気付くと思いますが…っ」
「教室に居た奴等は気付かなかったぞ」

あの黒木をも驚かせて

「…え、ほ…ホントですか…」
「……アキラは、鷲沢の事をよく見てるんだな」

俺の顔すら赤くさせた

「えっ…あっ、まあ…いいい一応パシリでお傍にはよく置かせて頂いているので…!」

ああ畜生
嬉しくて堪らねぇ

「女のアイツはどうだ?」
「いや、ほっホントに良く似合っていらっしゃるかと…っ!」

自然に緩んだ口元をさらしたまま山口を見詰めれば視線が合って

「……!」

一瞬驚いたような顔をしたアイツは、みるみるうちに首まで赤くさせて

そんな姿に満足した俺は
もとの制服に着替えてウザイ化粧も落とそうと、荷物の入った鞄を持って便所に移動した

「……ふう…」

女の制服とウィッグを適当に投げ捨てて、いつも馴染んだ自分のシャツとズボンに一安心

化粧もゴシゴシ擦って落としてやった

「…あー、面倒くせぇ…」

かったるい足取りで教室に戻れば

「「「……はあっ…」」」

「俺…鷲沢さんに惚れたのか…」
「いやだがあれは美人だったぞ…」
「…お前のせいじゃないさ…」

どこか沈んだ空気の室内と

「…全く萌えの無い展開だ」

至極つまらなさそうな顔をした黒木と

「……ふぅ…」

どこか安堵したようなアイツのため息




















あとがき

惚れた腫れた

「…良かった…」
「……あ?」

俺を認識出来た唯一のお前は

「…やっぱり俺は、今の鷲沢さんが好きです」
「……!」

いつも嵐のように俺の心を掻き乱していく

「……馬ぁ鹿」

女装なんかしなくたって

『当たり前だろ』

必ずお前を惚れさせてやるよ


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