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[あまい甘い特効薬 タカト×アキラ]
*タカト×アキラ



口元まで持って来られているのは、お粥がすくわれたスプーン

「おら、口開けろ」

いわゆる『あーん』なんて事をされている俺は山口アキラ、17歳

このあーんをしてくれているのが彼女だったらまだしも…

「…自分で食える…から…」
「ごちゃごちゃと煩ぇな」

何が悲しくて兄貴なんかに…

「……はぁ…」

小さく溜息をついてから小さく口を開けば、もう一度タカトにフーフーされて冷まされたお粥の乗ったスプーンが優しく寄せられて

弱々しく食べれば柔らかい声

「最初っからそうしてりゃあいいんだよ」

乱暴な口調だけど、限りなく甘いその優しさにむず痒くなりながらも
大人しく食べれば頭を撫でられた

「良い子だ」

タカトの仕事が休みの日に風邪を引いた俺が馬鹿だったのか

「…ほら、もう一口」

なんせ朝からあの暴君がこんな調子で、俺の精神状態は乱れまくりのなんのって

「…タカト…っ、大丈夫だから…」
「ああ?」

断ろうとしても聞き入れようともしてくれない

「熱あんだろ、ちったぁ黙って飯食う事に集中しろ」
「……うう…」

最早言い返すのも億劫で、項垂れるようにお粥を平らげて

「…ごっそーさん…」
「おう」

そこから飯を食って一気に熱が上がったらしい

ぐるぐる回る視界に負けるように再び枕に頭を預けて天井を見上げた

「…喉乾いたか?」
「……少し…」

囁くように呟けば、額を触られて目を細める

「…熱いな」
「気持ちいい…」
「あ?」
「…タカトの手…」

冷たくて気持ちいい…

そう言いながら、心地好い温度の右手を両手で掴んで
自分の首筋まで持っていく

「…っ、おいアキラ…」
「………冷たい…」
「わあった、氷持ってきてやるからとにかく離せ」

何処か戸惑ったような声も耳に届かず
上の空のままタカトの手のひらを首筋から胸に直接押し当てた時

「…いい加減にしろテメェ」

一際低くなった声と一緒に、心地好かった手がするりとシャツと俺の腕から抜けて行った

「…ぁ…」
「これが俺じゃ無かったら、今頃どうなってるか…」

名残惜し気な気持ちが声にも出ちまって

「…タカ…ト」
「コイツ置いたらすぐ戻る…大人しくしてろ」

傍に居て欲しいと伸ばした両手もさらりとかわされた

「…ったく、熱で浮かれてるお前と居ると…俺の理性も危ういぜ」


どうやらそれから、俺は意識を失うように眠ってしまったらしい

「………」

次に起きた時にはもう夕方だった

「……っ」

視線だけを横に向ければ、タカトは俺のベットの端に座りながら本を読んでるらしい

ページを捲る乾いた音が時々聞こえて、すごく安心する

「…………」

無言のまま左手を動かして、兄貴のシャツの端にほんの少し触れれば

「……」

動作を一瞬止めたタカトが、俺に合わせるように無言のまま
本を持っていない方の、さっきまでポケットに突っ込んでいたもう片方の手で
シャツの端に触れかけていた俺の手を
ゆっくり握ってくれた

「…………」
「……」

ゆらゆら染み込む安堵感と夢みたいに赤い陽射し

「………」

もう意識ははっきりしてるのに
不思議だ

まだタカトに甘えたい

「……ふあぁ…っ、眠ぃな」

読み掛けであろう本を床に落とすように置いた兄貴は
欠伸をしながらそう呟いて

「…晩飯は…どうする」

未だに繋いだままの手の指先を、悪戯に動かして俺に問う

「……ん、何でもいい…」

ずっと起きて様子を見てくれてた
そんな優しさに、俺自身すっかり溶かされちまったらしい

こっからじゃ、タカトがどんな顔してるのか全然見えないけど

「…何でもいいだぁ?無責任な事言いやがって…」

きっと今は困ったように笑ってる

「……お粥よりも…味が濃いの食いたい…」
「それも何でもいいと似たような答えだろうが」

甘えて甘やかされて
ホントにいつか駄目になっちまうんじゃ無いのかな

「…んーと、じゃあ……」

なあ
もしも俺が兄貴無しじゃ生きていけないような弟になったら、アンタはどうするつもりだよ

「…何だ、ようやくマシなリクエストか?」

その時も
まだ見捨てずに、ちゃんと責任取ってくれますか?

「…ん、…あれ」
「ああ?」

誰よりも一番信頼してるよ

『タカトが食いたい』

兄貴

















あとがき

いつか捨てられちまうかもなぁ

「……テメェは…」

こんな駄目な弟

「…は、いいぜ…」

甘えてばっかで、ビビリで

「それをお前が望むなら」

泣き虫で弱虫で

「何時間掛けたって食わせてやるよ」

アンタに依存しまくっちゃってる

『この俺を』





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

作者あとがき

アキラを甘やかすタカト、という事でしたが…
アキラがタカトに甘えてる感じが強く出てしまいました…
いやはや、しかし甘い(笑)

黒逓さん、素敵なリクエストをありがとうございました!

またいつでも気軽にしてやって下さいませ(笑)

以下オマケです
え、ちょっと不穏な空気かもしれないです
すいません←






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貪るように噛み付いて

「…ふ…ぁ…」

その綺麗な黒髪を右手で優しく撫でる

「…アキラ」

求められれば惜しみ無く、俺の全てをお前にくれてやるのに

「タカト…っ」

もうこんな不埒な夢を見るのにも慣れちまった

「…愛してる」

だからこそこの言葉を隠すことなく囁く

「…タカト…俺…っ…」

これが夢だろうが何だろうが、そんな事お構い無しに

「…愛してる、アキラ」
「うあ…っ」

全てをさらけ出す

『愛してる』

せめて今、この瞬間だけでも


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