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・伊藤side




















頭が

おかしくなりそうだ





















顔。


























怖くて、怖くてどうしようもなくて、端から見て自分がどれだけ異常に映っているのかすら気付けないまま、就業時間を終えて直ぐ様会社を飛び出した

「おい、伊藤……」

あの人の呼び止めなんかにも、今は振り向く余裕も無い

とにかく明日が土日で休みな事だけを有り難く思って、直ぐ様携帯を取り出した

「…………」

整形外科を探しながら、向かう先は駅

こんな田舎で整形すればすぐに噂が立つ

都会、都会に今すぐ出て小さな整形外科で手術しよう
そうでもしないと、俺は来週から仕事さえまともにこなせなくなる

怖い

こわいんだ

「……もしもし、あの、そちらで整形をしたいんですけど、予約、いけますか」

検索して何個目かのところに連絡をすれば、明日の予約もすんなり取り付けられて

「……はい、じゃあ、明日の9時に」

駅で東京行きの新幹線に乗り込んでは、大きなマスクで顔を隠した












久しぶりに来た東京は、人が多くて
誰も俺みたいな醜い人間なんか気にもしていないように思えて、少し気が楽だ

「………」

今日受ける整形外科も初診
医者はモノとしてしか俺を見ない

それもまた楽だった

「……すみません、予約していた伊藤ですが」

前日から近くのホテルに泊まって、この日を待ちわびた

「はい、こんにちは……あちらにお掛けになってお待ちください」

整形を出来ると思えば、心底落ち着く
手を入れれば入れる程、元の醜い俺からは離れていって
綺麗になれるような気がするから

「今日は、どのようなお悩みで?」

受付の女の人に少し話してから、次に医者との話し合い

そんないつも通りの流れにすら、精神の安定を感じてしまう

「では、こちらで先生が来られるまで少しお待ちください」
「……はい」

深くため息をついて、項垂れる事数分

「……お待たせしました」

ようやく現れた医者は、助手らしい女の人からカルテを受け取りながら俺の前に座って

「…………」

座って、何故かそのまま黙り込んだ

「……?」

それを不審に思った俺が、あのと声を掛ける直前

「…………」

その医者が首からぶら下げた名札を見て

次の瞬間には、息をすることすら出来なくなった

「…………」
「……」

お互いに続く異様な沈黙と、張り詰めた空気

そしてそれを打ち破ったのは

「……あの」

助手らしい女の一声

「先生……」
「………」

それに目の前の男がピクリと指先だけ反応させた瞬間

「……!?」
「あ、あのっお客様……!?」

俺は勢い良くその場から駆け出した

「……っ!」

なぜ
何故

どうして

混迷を極める頭でエレベーターのボタンを押したけど、待ちきれなくなって非常階段を下る途中、足を挫いて踊り場にひとりうずくまる

「はっ……っ、」

数分前にチラリと見えた名札の文字と、色を失ったような横顔の男

「なんで……っ」

嗚呼

知念だのなんだのと、最近はろくな人間と会わない

「……なんで……」

香我美センパイ

思い出したと同時にそう口に出す事すら怖くて、情けなく背中を壁に預ければ

「うあ……ああぁ……っ!」

中学の時から、あの恐怖に囚われて全く動けず、成長も出来ていないままの自分を痛感して、ひたすら泣いた


何故、こんなにも広いはずの世界で

何故、こんなにも出会いたくない人物と出会ってしまうのか

「……伊藤……」

年甲斐もなく大声で泣きわめく俺に、頭上から声が降ってきた

「来るな!近寄るなぁ……っ!」

相当酷く挫いたのか、立ち上がれないまま泣きわめいては後ずさる体は、直ぐに壁へとぶつかって

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「…………」
「醜くてごめんなさい、もう外なんて歩かない、俺はなにもしてない、ごめんなさい」

見上げる事すら怖い

「……伊藤」
「俺みたいなゴミが生きててごめんなさい、今すぐ消えます、だから、ごめんなさい」

結局俺は
整形をして何かが変わった気で居たけど
全くそんな事は無かったんだ

天罰が下った
親から貰った顔をいじって、生まれ変わった気になって

「……伊藤、止めろ」
「死にます、今すぐ死にますから」

もう、こんな苦しい夢なんて見たくない

「伊藤!」

だから、お願いだ

「ごめんなさい!」

俺を

じゆうにしてくださいよ、センパイ




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