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・香我美side














嗚呼、俺は

とんでもない過ちを犯してしまったのかもしれない


































顔。

























自分の肩を抱いて、ガタガタと震えるいい歳の男を、病院へと送り届けたのはついさっき

「…………」

いや、いい歳の男だけならまだしも、それにとてつもなく綺麗な顔をしたという言葉を付け足して、更に加えればその男の名前は「伊藤」ときた

「…………」

他人の空似を期待したが
本人が見せたあの怯えきった反応や、自虐的な言葉の数々


俺自身忘れかけていた記憶が鮮やかに蘇る

『香我美先輩』

アイツは、俺が中学の時に苛めた伊藤に間違いない

「……畜生」

あのボロボロに傷付いた心とは裏腹に、あの頃よりも格段綺麗になっている顔に苦虫を噛み潰す

「…………」

まさか餓鬼の頃の俺の行動が原因で、アイツという人間があそこまで病的な性格を背負い込んでいたなんて知らなかった

出来れば、知りたくもなかった

だが、今日俺は知ってしまった

「……はあっ」

この道に入って仕事を始めた理由の根底を揺らすあの衰弱した男をどうにかしなければ、こっちまで後味が悪い

だが、迂闊に近付いたりなんかすれば確実にまた今日みたいな反応をされて終わるだろう

「……チッ、ったく……どういう運命の悪戯なんだか……」

そうは呟きながらも、あの異常な様子の伊藤を思い出して、後ろめたさが無い訳じゃ無い

「……はあっ」

頭を掻きながら空を見上げる

「…………」

憎いほど綺麗な月が俺を見下ろした

「……」

今になってようやく手にいれたこの職は、人に喜ばれる

先生、先生と誰もが俺を慕い、敬い、仕事に対価を払う

昔みたいな蹴落として誰かを傷付けていた頃とは違う

俺は、完璧になれた筈だった

「……はあっ」

そんな中で、急に突き付けられた過去

強がっちゃいるが、俺自身ショックを隠せない

「……先生」

後ろで囁く声が呼ぶ

「ああ、今いく」

俺は何もかもを振り切った











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