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神谷リョウ

 さっきまでここに居た、胡散臭い笑みを張り付けた野郎を思い出して短くなった煙草を吐き出した。

 胸くそ悪い。何時見ても不愉快だ。

 最初からウマが合わなかった。あんな表面だけ取り繕ったヤツなんて心底気持ち悪くて胸焼けがする。
 何回タイマンを張っても決着がつかず、その上向こうは勉学も交遊関係も一通り器用に出来やがるんだから、こっちが余計に気に食わないのは当然だった。

「気に入らねえ……」

 おかげでココに入った時から対立して犬猿の仲。本当なら見たくも会いたくもない。

「……」

 だが、どういう魂胆か。アイツは俺に突然ゲームとやらを持ち掛けた。
 この学校にリーダーは一人しかいらないだあ? ふざけやがって……。
 リーダーなんてどうだっていい。俺はアイツがムカつく、噛み付く理由はそれだけだ。

 この一ヶ月の間により早く女を落とした方が勝ち。手段は問わない。
 つまり、殴って無理矢理ひれ伏せさせても良いって事か……。

 新しい煙草をポケットから取り出して口にくわえた。

「木下、椿……」

 どうでもいい名前を呟いて一歩踏み出す。

 相手の女の事なんて自分には何の関係もない。
 こんなゲームに使われるようなヤツだ、よっぽどのアバズレだろう。

「……チッ」

 まとわりつく風を振りきって屋上の扉を開く。



 それは、静かなゲームの始まりだった。




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