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中村イツキ










今日もいつも通り授業を終えて、職員室に戻る途中

「……?」

また3年校舎の前で群がっている1年生たちの間を通り抜ける

「なんだなにがあったんだよ!」
「白柳さんが黒武さんの教室でっ」
「喧嘩か!?」

そんな言葉が飛び交うのを聞きながら

「いや、違う!」
「じゃあなんだよ」

けど、次の子が叫ぶように発した台詞に

「紙、燃やしてんだってよ!」
「……!」

俺は足を止めて、勢い良く3年校舎を見上げた

「はあ?紙?」
「作文のやつ!」

まさか

そう思いながらも、1年生の人混みを掻き分けて3年校舎へと足を踏み入れる

「ごめん!ごめんちょっと通して……!」

嫌に上がる心拍数

確認せずには、いられなかった

『文字書いている時が、一番落ち着くんだよ』

あれは、彼にとっての命

『……馬鹿みてえに思うかもしんねえけど』

そして、俺にとっての希望

「通るよ!」

例え彼が生徒だと分かっても、俺は彼の作品が嫌いになった訳じゃない

あれは、素晴らしい作品になる

彼が心血を注いできた全てだと、俺には理解出来るくらいに

「どいて!」
「ってえなテメェ!」

妙に焦げ臭いにおいが広がる階段を駆け上がって、角を曲がって

「は……っ」

その教室を覗き込めば

「…………」

窓から吹き込む強い風に舞う白い原稿用紙の中、それに溶け込むように立つ白い男が

「……」

ライターで悪戯に紙を燃やしていた

「…………」

その白い人の足元に落ちている、燃やされた幾枚もの紙らしきもの

「……なんだお前」

どこか寂しそうにも見えるその瞳なんて今は気にならない程、俺の心は今怒りと悲しみで埋まっていて

「……やめなさい」

至近距離まで近付いてライターをその手から叩き落としたと同時に、掴み上げられる胸ぐら

「……あ?殴られてえのか」
「貴方のした事は、最低だ」

俺と白い人の間に、張り詰めた空気が流れた


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