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白柳












3年も、もう中盤に差し掛かろうとしている夏の匂い

「…………」

スーツで行き交う大学生とおぼしき就職活動の連中

くたびれたサラリーマン

派手な服を着た販売員

忙しそうな若い男

「…………」

町を行き交う人混みを、ただぼんやりと見詰める

「…………」

アイツ等は、なぜ働いているのだろう

生きるために働くのか
それとも、働くために生きるのか

「……」

俺には社会で働く意欲もなければ、夢もない

なにをしていいのかも分からない

適当に生きて、適当に選んできた

この世にはあまりに選択肢が多すぎて

『……テメェ』

俺は、なにもかもを選ぶのに疲れてしまった

「…………」

バカは汚い仕事でもして、底辺で食っていればいい

そんな囁きが聞こえてきても、反論する気にすらなれない

「……はあ」

今まで、社会を見て見ぬふりをして生きてきた

だが大学なんて死んでも行く気になれない事を考えると、俺はきっと就職をするんだろう

『屑』

適当に

『お前みたいなバカいらねえよ』

曖昧に

「…………」

自分が凄い人物になれるとも思わなければ、価値のある人間だとも思わない

だが、金がなければ生きていけない世の中だ
なにがなんでも、ここで生きていく為には金だけは必要になる

「……」

今日も現実から逃げるために重い腰を上げる

「……はあ」

ため息が空気に溶けては消えた


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